アンティークレッスン Vol.7【Saint Louis(サンルイ)】
esson Vol.8
Saint Louis(サンルイ)
―― 伝統と美の世界 ――
宮廷の装飾品としての顔をもち、サロンや特別なシーンに欠かせないアイテムとして
使い続けられてきたフランスのクリスタルガラスメーカー サンルイ社(Saint-Louis Cristallerie)
水晶のような透明感と光の屈折率の高さから、
それまでのガラスとは全く違う角度によってキラキラとしたその輝きで人々を魅了したクリスタルガラスです。
遡ること1781年にサンルイ社の工房において開発に成功したクリスタルガラスは、
以来その高貴なまでの透明感と洗練されたデザインで多くの人に支持され、
今日にいたるまで多くの人に愛され続け不動の地位を築いています。
フランスではサンルイ社と双璧をなすバカラ社は
そのクオリティの高さから他の追随を許さない特別感溢れるクリスタルガラスメーカーとして
互いに競い続けてきた歴史があります。
( 1800年前半に一時期バカラ社はサンルイ社に身を寄せていた時期がありますが、
その後独立し今日に至る経緯もあります。
あまり知られていませんが、サンルイ社のほうがバカラ社より古い歴史があるのです。)
頑なまでにその伝統を受け継ぎながらその高度な職人技を継承し
時代時代で生活の中に溶け込みシリーズ化された製品も数多く
100年を超えるロングランシリーズも存在します。
そして 1995年にサンルイは 同じフランスの高級ブランド エルメスグループの
一員となり今日に至っています。
©HERMES エルメス
高度な技術を要するクリスタルガラスの製造を始め、
そのガラスの表面にアシッドエッチング、グラヴィール、
さらにカッティングといった技術(技法)を熟練した職人によって自在に施された製品はグラス、
デキャンタ、花瓶、器、シャンデリアなど、多岐に渡ります。
製品には、アシッドエッチング(注)技法でガラスの表面に模様を入れ、
その模様の上から金彩(24金)を施したものやオルモル装飾が加工されたものなど
より贅沢な仕上がりとなっているものもあります。
またガラスも透明なものからカラフルな色合いのものまで存在します。
サンルイ社は、フランス北東部のドイツとの国境近くに位置するロレーヌ地方
ミュンツタール(Münzthal Saint-Louis-lès-Bitche )に工房を構えています。
この地方は、ラリック、エミールガレなどの日本でも人気高いガラス工芸品で有名な
ナンシー(Nancy)やバカラなどガラス工芸の拠点が多数存在します。
その地に根を下ろし 時の権力者 ルイ15世(King Louis XV)から
サンルイの称号(Verrerie Royale De Saint Louis)を受けたのが1767年、
1781年にヨーロッパ大陸で初めてクリスタルガラスの製造を手掛けて
以来フランスのクリスタルガラスの先駆者として数々の名品を創り続けてきたサンルイ社は、
フランス国内のみならず、国外においてもステータスの証としての一面も合わせ持つ、
揺るぎない信頼のクリスタルガラスメーカーなのです。
サンルイクリスタルミュージアム
©Saint-Louis glass musium
セーブル、マイセン、ヘレンド、バカラ、をはじめ多くの陶磁器、ガラス製品には
そのアイデンティティを証明する刻印 サインが本体の一部に施されます。
このマークによってその製品の製造者を担保するものですが、
ガラス製品には刻印もサインも何もないものが存在します。
サンルイにおいても1936年以前の製品には、本体に紙のシールが張られていた時期がありますが、
グラス類などは洗った際にはがれるなどしてなにもないものが少なくありません。
ですが、サンルイでは毎年 製造した製品をカタログに納め、
そのデザイン、スタイルをその中から判別することが可能になっています。
サンルイの製品カタログ
©Saint-Louis
©Saint-Louis
©Saint-Louis
1936年以後のものには、底面にアシッドエッチング技法で丸い円の中に
CRYSTAL ST-LOUIS FRANCE の文字が読み取れます。
その気品に溢れたサンルイ社の創り出す究極のガラス工芸美は、
時の経過とともに日本でもその美しさに共感するひとが増えてきています。
【 執筆 / 監修 】 小田 柚季
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